A:相続専門家の“御三家”ともいえる「弁護士」「税理士」「司法書士」ですが、このうち誰か一人の専門家に相談するだけで問題や不安がすべて解消する、ということはほぼありません。相続というのは様々な専門分野が複雑に絡み合っています。遺産の分け方で揉めている人と、自宅不動産の名義変更で困っている人、相続税がいくらになるのか気になっている人とでは、相談相手が異なります。
不動産の相続手続きは「司法書士」
亡くなった方の財産に不動産があった場合、相続人への名義変更をする必要があります。その手続きをサポートしてくれるのが「司法書士」です。不動産の名義変更を行うために必要な場合は、財産や相続人の調査や遺産分割協議書の作成もしてくれます。不動産の名義変更を代理できるのは司法書士のみ(※3)です。
相続税の計算・申告は「税理士」
相続財産が一定以上の金額になると税務署に申告をして相続税を支払う必要があります。相続税の計算や申告をサポートしてくれるのが「税理士」です。相談する税理士を選ぶ場合には注意が必要です。相続税の申告が必要な人は相続全体の5%程度と少数のため、相続の実務経験がゼロという税理士は少なくありません。相続税申告のスペシャリストとなると、ほんの一握りです。相談する税理士を選ぶ際には、相続分野での実績をしっかりチェックしましょう。
手続きから紛争まで幅広く相続をサポートする「弁護士」
弁護士は、不動産の有無、相続税申告の要否に関わらず、広く相続手続きをサポートします。その範囲に制限はありません。また、紛争に発展した場合に代理人として交渉や調停、訴訟のサポートをできるのは弁護士だけです。紛争の火種は相続発生前または発生直後にできることが多いものです。「争族」の現場を熟知しているからこそ、早期に弁護士に相談することで最悪の事態を回避したり、無用な争いを防ぐことが期待できます。
弁護士・司法書士・税理士の相談の専門分野
税理士 | 司法書士 | 弁護士 | |
遺言書作成 | ×※1 | ○ | ○ |
財産調査 | △※2 | △※3 | ○ |
相続人調査 | △※2 | △※3 | ○ |
紛争介入 | × | × | ○ |
遺産分割協議書作成 | △※2 | △※3 | ○ |
不動産の名義変更 | × | ○ | △※4 |
※1 行政書士としても登録している税理士は可
※2 相続税申告に付随する範囲で可能
※3 相続登記に付随する範囲で可能
※4 違法ではないが相続登記を業務とする弁護士は少ない
執筆者:代表弁護士/山下江